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【2024年最新版】放射温度計とは ~放射率や黒体などを理解して正しく温度測定しよう!~

 

放射温度計とは物体に触れずに温度を測定できる「非接触式」温度計です。

全ての物体からはその温度に見合った赤外線が放射されていますが、その放射される赤外線の強さ(エネルギー)は温度が高くなるにつれて増加するため、放射エネルギー量を検知することで温度を知ることができます。そのため赤外線温度計とも呼ばれています。

放射温度計は原理などが少し分かりづらいところもあるため、今回はこの「放射温度計とは」というところを少し深掘りして分かりやすくお伝えしたいと思います。この機会に放射温度計の基本的なことを知っていただき、正しい温度測定についての一助になれば幸いです。

目次

    1. 1. 放射温度計など温度計の種類
      1. 1-1. 熱の伝わり方
      2. 1-2. 温度計の種類
    2. 2. 放射温度計と赤外線
    3. 3. 放射温度計の大きな分類(ハンディタイプと設置型)
    4. 4. 放射温度計と放射率・黒体
      1. 4-1. 放射率・黒体
      2. 4-2. 黒体炉
      3. 4-3. 吸収・反射・透過
      4. 4-4. 主な物質の放射率
      5. 4-5. 放射率の求め方
    1. 5. 放射温度計のまとめ

放射温度計など温度計の分類

熱の伝わり方

熱は3つの現象により伝わります。「伝導」「対流」そして「放射」の3つです。

 

〇「伝導」

沸騰したヤカンに触れるとやけどをしますが、
これはヤカンの温度が直接人間の体に伝わっています。触れることで直接熱が伝わります。

 

〇「対流」

エアコンをつけると熱い空気は上に上昇し、
少し冷えたら下に下がってきてまた熱い空気が
上昇するという事で部屋全体が温まります。

 

〇「放射」

電気ストーブなどは手をかざすだけで温まりますが、
これは熱源から赤外線が放射されており、
その赤外線が伝播することで熱を感じます。

 

温度計の種類

温度計にはこれらの現象を利用して「接触式」と「非接触式」に分類されます。

〇接触式温度計
熱電対・・・ワークが固体、液体の場合は接触させて伝導の原理で温度計測定部と一致させ、気体の場合は対流によって一致させる方式です。一般的に構造が簡単なものが多く、安価なものが主流ですが接触することでワークの熱を奪う事になるため接触のさせかたに注意が必要です。また温度が一致するまで時間がかかる場合が多いため昇温速度が速いワークの場合は適しておりません。

 

〇非接触式温度計
放射温度計・・・放射温度計とはあらゆる物体から放射されている赤外線を検知し、温度に換算する温度計です。原理上、物体に接触させなくても温度測定できるため物体の温度を奪うこともなく傷をつけることもないため安心してお使いいただけます。

 

放射温度計のメリット

  • 物体に触れなくても温度が測定できる!
    非接触で測定できるため数千度のワークを測定しても感温部の温度上昇がないため耐久性が高く消耗品がないため経済的に運用が可能です。
  • 高速で温度測定ができる!
    サンプリング速度が非常に速いため昇温時間が速いワークや移動・回転しているようなワークでも問題なく温度測定が可能です。

放射温度計のデメリット

  • 接触式に比べると構造が複雑なため高価なものが多く、放射率などの設定が必要となります。

 

放射温度計と赤外線

放射温度計で検出するのは赤外線です。
基本的に目で見ることはできない赤外線とはいったいどのようなものでしょうか。
私たちは普段から太陽の光などを日常的に感じていますが、この光と同じく赤外線も電磁波の一種です。
同じ電磁波でも波長の長さによってかなり性質が異なることが下の図からお分かりいただけると思います。

 

この電磁波のうち、赤外線は0.76μm~0.8μmくらいを下限として、上限は1mm程度の範囲の事を言い、さらに境界はあいまいですが、2.5μm以下を近赤外、2.5~4μmを中赤外、4μm以上を遠赤外と呼びます。

また赤外線の放射エネルギーは温度が高くなるほど強くなり、それに従って波長分布のピークは短波長側にシフトしていきます。(プランクの放射則)

 

※赤外線や熱放射、プランクの放射則、シュテファン・ボルツマンの法則の詳細はこちらから

放射温度計の大きな分類(ハンディタイプと設置型)

放射温度計は、前述したとおり測定対象物に直接触れずに温度を測定できる便利な計測器です。大きく分けてハンディタイプと設置型の2種類があり、それぞれ異なる特長を持っています。

ハンディタイプの特長

・持ち運びが容易で、場所を選ばずに測定できる
・軽量コンパクトでシンプルなインターフェースが多く、片手で簡単に操作できる
・瞬時に温度測定ができるため、素早く状況を把握できる
・比較的安価なモデルが多い

設置型 放射温度計の特長

・連続的な温度測定ができるため長期的な温度変動の監視や分析に最適
・アナログ信号が出力されるためデータロガーなどと接続して温度データを記録・管理できる
・アラーム機能があるモデルもあり、生産設備の制御に使える
・人が立ち入れない高温雰囲気や危険な場所でも使用可能

 
 
ハンディタイプの放射温度計は、持ち運びが容易でさまざまな場所での測定に適しています。一方の設置型 放射温度計は連続的な温度測定に適しています。そのため管理・制御・トレーサビリティなどに活用されます。
用途や目的に合わせて、適切なタイプの放射温度計を選択することが重要です。

放射温度計と放射率・黒体

■放射率・黒体

放射率とは物質の表面から放射される赤外エネルギーの能率を表す尺度で、自身は全く放射せず外からのエネルギーも完全に反射する物体の放射率を0として「鏡面体」と呼び、全てのエネルギーを100%吸収・放射する物体の放射率を1として「黒体(こくたい black body)」と呼び、放射率は0~1の値で表します。ただし「鏡面体」も「黒体」も理想物体であり、自然界には存在しません。
鏡面体や黒体以外の物体を「灰色体(かいしょくたい)」と呼びます。

■黒体炉

黒体は理想物体であり、自然界にはないと述べましたが、赤外線を一定の条件で多重反射させた放射エネルギーは疑似的に黒体放射とみなすことができます。
これを黒体炉と呼びます。
放射温度計は全てこの黒体炉で温度校正されているため、放射率1.0のときに正しい温度を示すように調整されています。
そのため灰色体のワークを測定する場合は、そのワークの放射率を調べて設定することで灰色体でも正しい温度が測定できるようになります。

※黒体炉の詳細についてはこちらから

■吸収・反射・透過

黒体以外の灰色体の物質は、放射エネルギーが物質表面に当たるとエネルギーはそれぞれ「吸収」「反射」「透過」をし、これらはエネルギー保存則から以下の式が成立します。

これは『物質の放射率εは吸収率αに等しい』というものです。(吸収=放射)
つまり、この法則により鏡面体のような吸収率の悪い物質は放射率は低くなり(0に近くなる)、黒体に近い吸収率の高い物質は放射率が高い(1に近づく)ということが証明されるのです。

※キルヒホフの放射法則についての詳細はこちらから

■主な物質の放射率

あらゆる物質は放射率0~1の間にあり、物質の材質によって放射率は異なります。また同一物質であっても表面状態(酸化、汚れ)、表面形状(粗さ、凸凹)、そして温度によっても変化します。
さらに言うと測定する放射温度計の測定波長によっても変化します。
つまりちょっとでも環境や状況が変わると放射率も変わってしまう可能性が高いという事です。
一般的に光沢のある金属面は放射率が低く、同じ金属でも表面が酸化すると放射率が高くなります。
絶縁物はいずれも放射率が高い傾向にあります。

※主な物質の放射率一覧

■放射率の求め方

放射温度計を使って温度測定する場合は必ず放射率設定を行う必要があります。前述のとおり放射率は材質、温度、表面状態、測定波長などによって変化してしまうため、文献等の資料から正しい条件での放射率を探し出すことは非常に困難です。
このため一般的には下記方法によって、温度測定をする現場環境に合わせて求めます。

  • 1. 接触型温度計を使う方法
    1. 1-1. 実際に測定するワークを加熱し、測定したい温度範囲のなるべく一番高い温度に設定します。
    2. 1-2. 熱電対などの接触式温度計で温度測定します。この場合、放射温度計で測定したい箇所の近傍で温度測定してください。
    3. 1-3. 放射温度計を実際に測定する場合と同じ要領で温度測定を行います。(この時の放射率設定値はまだ1.0でOK)
    4. 1-4. ここで放射率自動補正機能を使って、接触式温度計が示している温度を放射温度計側に入力すると自動で放射率を設定してくれます。
      放射率自動補正機能が無い機種の場合は、接触式温度計が示す温度と同じ温度表示になるように放射率設定値を下げていきます。(放射率設定値を1.0より低い値にすると温度表示は高く表示される)
    5. 1-5. この時に表示されている放射率設定値が、その温度や条件における放射率となります。
  • 2. 黒体塗料による方法
    1. 2-1. あらかじめ放射率のわかっている黒体塗料(当社にて別売:JSC-3号)をワークの一部に測定スポット径の2倍以上の面積で塗布します。
    2. 2-2. ワークを加熱し、測定したい温度範囲のなるべく一番高い温度に設定します。
    3. 2-3. まずは放射温度計を実際に測定する場合と同じ要領で黒体塗料を塗布した部分の温度測定を行い、その際の温度測定値をメモしておきます。
    4. 2-4. つぎに黒体塗料を塗布した部分になるべく近い、塗布していない箇所の温度測定を行います。
      ここで放射率自動補正機能を使って、2-3でメモしておいた温度指示値を入力すると自動で放射率を設定してくれます。
      放射率自動補正機能が無い機種の場合は、2-3でメモしておいた温度指示値になるように放射率設定値を下げていきます。(放射率設定値を1.0より低い値にすると温度表示は高く表示される)
    5. 2-5. この時に表示されている放射率設定値が、その温度や条件における放射率となります。

※黒体塗料の仕様や概要はこちらから
※黒体塗料の塗布方法などはこちらから

『放射温度計とは』のまとめ

  • 放射温度計とはワークから放射される赤外線を検出する非接触式の温度計
  • 放射率とはワークから放射される赤外線エネルギーの能率を表す尺度で0(鏡面体)~1(黒体)で表される。
  • 黒体とはあらゆるエネルギーを全吸収・全放射する理想物質。
  • 放射温度計は黒体炉で温度校正されているため黒体でしか正しい温度測定ができない。
  • 一般的な物質はエネルギーを「吸収」「反射」「透過」するため、材質などに合わせて放射率値を設定することで灰色体でも正しい温度測定が可能になる。

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